ギラーモ・フォルチーノ

単身赴任生活のおかげで図らずも持てた「ちゃぶ台ファクトリー」。
単身生活ゆえ家族への気兼ねもなく、出勤前、帰宅後、食事をしながら、テレビを見ながら、思う存分、好きな模型いじり。

この4月、ひょっとすると「ちゃぶ台ファクトリー」も撤収やむなしかと覚悟していた。
単身生活終了、自宅から通勤可能な職場に“人事異動”の可能性ありと、嬉しいような残念なような複雑な心境で、3月後半を過ごした。
作業途中の「ゼムケのP47 1/18を作る」プロジェクトも中断し、というか、気もそぞろで手につかず。

「もう1年、頼むよ。」
上司の言葉でファクトリー継続が決まった。これも出来る、あれも出来ると夢が広がった。
ただ、正直、ホームシック感も。自宅に戻れない寂しさはかくせないが、別に海外に赴任してるわけでもなし。
カーナビの計測で、ドアツードアで81km。時速80kmで走れば1時間の距離。実際に首都高速を使って1時間30分かかるか、かからないか。週末には苦もなく帰れる。別荘だと考えれば、なんか贅沢な気分。

「もう少し広いところに変わったら?」
なんと、びっくり。嬉しい奥さんの言葉。
単身赴任により、整備が中断して倉庫と化していた、自宅近くの「趣味部屋」を、いっそのこと移動してしまったら、という提案。
「少なくともあと1年戻れないなら、趣味部屋も完成しないまま倉庫になっちゃうんじゃ、もったいないじゃない。」
「そ、そうだね。保管されてるままじゃ、模型たちもかわいそうだよね。ねっ。」
「模型に囲まれて、お酒、飲みたいんでしょ。」
「うん、うん、飲みたい、飲みたい。」

今までのアパートから歩いて3分。理想的な物件が見つかった。間取りも環境も希望以上。
とんとん拍子に契約も進み、あとは趣味部屋の中身を引越しさせるのみ。それもあと1〜2週間のうちに完了する。
「もう少し広いところに変わったら?」と提案してくれた奥さん、いや奥様さまが “天使” に見える。いまのところ。

趣味部屋引越しのための梱包作業はなかなかトントンとは進まない。
「おっ、これはどうやって飾ろうかな?」「こいつはここを修理しなきゃ。」「こいつは処分するか。」、あげくに「これ、やっぱ、かっこいいなぁ。」…。
ひとつひとつにつかまって、ちっとも手が動かない。片付けることが苦手な人によくあるパターン。

「おお、ギラーモ・フォルチーノだっ。」
箱に入れたまま保管されていた模型。いや、模型というよりオブジェ。
梱包どころか、箱から出して見入ってしまった。

「ギラーモ・フォルチーノ」は作家の名前。Guillermo Forchino。
1952年、アルゼンチン生まれ。両親はイタリア人。現在パリ在住。ポリレジンで作品を作る。
英語のWebサイトでは “ Comic Art ” と紹介されている。 
コミックタッチの立体造形は独特の世界観。作品一つ一つにドラマがある。

forchino1

forchino2
作品名「Business Trip」

forchino3

forchino4
作品名「Taxi」

スケールを問うのは的外れかもしれないが、あえて。
「Business Trip」という作品は、たぶんポルシェ356。実車は全長3870mmでこの作品は全長330mm。
3870÷330=11.7272…。四捨五入して12。で、1/12ということになる。

 「新趣味部屋(仮称)」のどこに飾ろうかな。いや、趣味部屋よりも「VM Studio」がいい。
「VM Studio」は、Visual and Aidio Studioのこと。実は、テレビとオーディオを並べたリビング・ルームの一角。 ネーミングも楽しむ。
「趣味部屋」も、なんかかっこいいネーミングがないか模索中。

フォルチーノの作品、デザインが気に入っている真空管アンプの横あたりに飾ったら、きっといい感じになるぞ。

ゼムケのP47 1/18を作る 2

ゼムケのP471/18を作るプロジェクト。現在、コックピットの改造で苦戦中。

キットのままの造型で我慢できればそれほど苦労はないのに、細かいところが気になりだして、いろいろ手を出し始めてしまった。
計器パネルはやっぱり針なんかがなくては“さま”にならないし、スイッチ類なんかも“それらしく”表現したい。
スロットルレバーの造型は省略されてしまっているから、やっぱり作らなくては。操縦桿の角度も少し気になるなぁ。
シートも修正してパイロットがちゃんと座れるようにしなきゃ。

先にとりあえず完成させたパイロット。それなりには出来たつもりだが、眺めているうちに欲が出始めた。
いやぁ、もうちょっとリアルに作れないかなぁ。

で、先のパイロットと同じシリーズの1/18フィギュアを見つけて再挑戦。
今回のフィギュアはヘルメットや顔、襟周りの造型が、先の物に比べて細かい。表情もなんとなくゼムケに似ている。
革のA-2を着せ、トラウザースも前回の轍を踏まえて丁寧に穿かせた。
救命胴衣やパラシュートも、細かい作業をいらいらしながら、指先で勝負。ま、とりあえず納得の出来。
酸素マスクはいい感じ。エポキシパテでマスク部をつくり、ホースは針金をコイル状に巻いて造形した。塗装はタミヤのアクリルカラーの「ラバー・ブラック」。
パラシュートは1/6のものを横において作業。ベルトは白い薄い革材を使い、縫い目は手書き。
納得するまでなんども作り直す。TVを見ながらの “ながら作業”。至福の時間。

P47pilotsecond1
左から バージョン2 バージョン1 ベース
P47pilotsecond2

P47pilotsecond3

作るためにいろいろ調べる。
資料画像を集め、ここはこうで、なるほどこれはこういう構造か。ふんふん。
背負ったパラシュートの傘収納部についている座布団みたいなのが、操縦席のシートに収まるときのクッションになる。
どう見てもすわり心地悪そう。シートなんて量販店で扱う座椅子とそう変わらない。いや、むしろ最近の座椅子の方が、リクライニングのものや、低反発クッションのものなんかあったりして、断然心地がいい。
その上、コックピット内は狭い。狭い上にいろんな計器類がいっぱい。そして何より高度の飛行は寒い。けどエアコンなんて無い。劣悪な居住性。
その中で巨体を操り、命を掛ける。想像を絶する世界だなぁ。
次々と出てくる当時の画像を見ながら、そんなことを考えた。

A-2の襟から覗く、ほんのわずかな赤い裏地が会心のこだわり部分。面相筆の筆先に全神経を集中した。あぁ、肩が凝った。
先のバージョン1に比べると、かなり “進歩した” と自己満足のバージョン2.
あぁ、はやく機体を完成させてコックピットに座らせたい。が、先は長い。

ドラえもんの「スモール・ライト」。どこかで商品化しないかなぁ。好みのサイズを指定できる模型製作用モデル。
1/6や1/24、1/32、1/200なんてメモリが着いていて、瞬時にそのスケールに変えられる。
そんなんがあったら、指先を震わせながら、極細のベルトに、爪楊枝の先につけたボンドを塗る、なんて作業は必要なくなる。
いやぁ、モデラー垂涎のアイテムだ。「どこでもドア」より欲しいかも。

でもさ、無心になれる細かい作業がなくなったら、模型作りの楽しさって何なの、なんて思わないか。
うん、確かにそうだな。

ゼムケのP47 1/18を作る 余話

ヒューバート・ゼムケを知ったのは確か3年半ほど前。きっかけはトイズ・マッコイ。

2007年だったと思うが、トイズ・マッコイが裏地が赤いシルクのA-2をリリースした。ベースとなったのは、ゼムケ(Hubert Zemke)大佐が着用していたA-2。
確か、商品名は“トイズマッコイ A-2 ウルフパック レッドシルク”。おおう、かっこいい。商品の解説には、“第8航空軍第56戦闘航空群”や“ゼムケ大佐”、“ゼムケズ・ウルフバック”なんて記述が並ぶ。“エースパイロット”なんて記述には胸が踊った。
なんで裏地が赤いかというと、エース・パイロットの証ということ。敵機を5機撃墜すると“撃墜王”、つまり“エース・パイロット”と認められる。第56戦闘航空群では、その証としてA-2の裏地を赤にすることに決めたんだとか。

裏地が真っ赤なんて、超かっこいい。それが “エース・パイロット” の証だというのだから、壷に嵌った。
もっとゼムケという人のことを知りたい。 “エース・パイロット” の証で裏地を赤にしたって後からの作り話じゃないの?
もう何年の前から、分らないときはWeb頼み。
愛用の「Google」に“ゼムケ”と入力して「検索」をクリック。結果、「P47サンダーボルト戦闘機隊—名戦闘機隊長ゼムケ大佐 語る」という項目が出た。
ビンゴって感じ。ほほう、本が出ているらしい。

ちなみに、今、同様に検索しても、検索結果の2、3項目目に「Amazon.co.jp: P47サンダーボルト戦闘機隊 ..」と出る。
.以下がその本の解説文。

〜 ゼムケ大佐率いるアメリカ第8航空軍第56戦闘航空群が英国に展開したとき、ドイツ空軍は依然として強力な敵だった。
実戦経験のない隊員たちはドイツの熟練パイロットに苦戦を強いられる。ゼムケはこの逆境を強力なリーダーシップで克服しようとした。
部下たちに規律を徹底させる一方で、部隊のためには将軍とも喧嘩する。
そんな彼の努力が実を結び、やがて第56は第8航空軍きっての精鋭戦闘機隊へと変貌を遂げる。
「ゼムケの狼群」の伝説的名指揮官ゼムケ大佐が、苦闘と栄光の日々を自らの言葉で語る本書は、逆境にあって屈せず、創意と努力でそれを克服した一人のリーダーの生きざまを垣間見せる好著である。〜

その時はこんな解説も読まず、その本を入手したのは後から。でも、読むまでもない。こんな本があるくらいだから。と、それだけで “ゼムケ大佐はかっこいい” と思い込んだ。
“トイズマッコイ A-2 ウルフパック レッドシルク” が欲しい。自分でも呆れる単細胞。
ちなみにこの単細胞は、どうも治す薬がない。自覚があるが、どうにも治療方法が見つからない。こんな重病患者を見捨てない奥さんに感謝。

このゼムケのA-2をリリース知ったのは、発売から1年半も経ってから。恵比寿の「トイズ・マッコイ」に電話したが、当然  “完売”  の回答。けど、諦めきれない。
「トイズ・マッコイ」の正規取扱店を調べ、南から順に根気よく電話で照会した。確か仙台のお店だったかしら、北から行けばよかったと思った。「在庫1着あり」でサイズもドンピシャ。夢見心地。

到着したA-2を見て、うっとり。赤がいい。裏地の肌触りがいい。革もいい感じで、着心地も大満足。エース・パイロットになった気がした。

A-2red 

「ゼムケ大佐 語る」の本。A-2の着心地に酔いしれて、やっぱり欲しくなった。 “エース・パイロット” の証で裏地を赤にしたって作り話じゃないの、という疑問が頭をよぎって確認したくなった。
通販で入手した。早川書房が1994年に発行したハード・カバーで、著者はロジャー・A・フリーマンという人。
187ページからに、ちゃんとその記述があった。

〜 ことにうれしかったのは、ジェリー。ジョンソンがMe109一機を撃墜して、これで彼の撃墜機数は5機となり、彼は“エース”つまり撃墜王となったという点だった。…中略
ジェリーの功績を表彰するため、われわれは彼を他の仲間からすぐに識別できるようにする方法が何かないか、捜し求めた。誰かが、カスター将軍麾下の精鋭騎兵隊が、レッド・インディアンの勇敢な戦士たちと戦闘を交える際に、明るい緋色のスカーフを巻いていたことを思い出した。われわれはわが航空群ではエースの目印をジャケットにつける赤い絹の裏地にすることに決めた。
こうしてジェリーは上着をはぎとられ、その上着はロンドンに送られて緋色の裏地をつけてもらうことになった。〜

アメリカのオハイオ州デイトンにある国立アメリカ空軍博物館: National Museum of the United States Air Forceに、実際にゼムケ大佐が着用したA-2が保存されていることも知った。
公式ホームページにはその写真が掲載されている。で、その解説文の一部は次のとおり。

The 56th had a tradition that when a pilot became an ace, he could have red lining sewn into his flight jacket; …
第56(戦闘航空)には、パイロットがエースになった時、フライトジャケットに赤い裏を縫い込むことができる、という伝統があって…てな意味か。

ちなみにこの博物館はライト・パターソン空軍基地内にあり、ライト兄弟が初飛行した場所はこの敷地内。名称のライトはライト兄弟のライト。

間違いない。赤い裏地はエース・パイロットの証。レプリカじゃんと言えば見も蓋もないが、“トイズマッコイ A2 ウルフパック レッドシルク” を持てたこと、結構自慢なのだ。

実は、このゼムケ・レプリカにはもう一つ、トイズ・マッコイらしい、プロデューサーの岡本博らしい、 “粋” な仕掛けがある。どうしても手に入れたくなったのは、この仕掛けが決定打。
裏地の左前部分にラベルが縫い付けられていて、そこにはロンドンの縫製会社名が表記されている。

A-2red2 

styled by GRIFFTH  LIMITED  MANUFACTURERS  LONDON
Expressly  for  The United States Forces   European Military Operation 

このA-2は、「グリフィス」という会社が、ヨーロッパに軍事展開するアメリカ軍のために仕立て直したという証明。

で、この「グリフィス」という名前。おおうっ、な、なんと。やられたっ。
さすがと言うか、呆れたというか、やっぱり岡本さんのこだわりの遊び心。

「グリフィス」とは、あの映画「大脱走」で、脱走計画の重要な役割を果たした捕虜の1人の名前。ロバート・デズモンドという人が演じている。
劇中、グリフィスの役割は仕立て屋。Tailorがニックネーム。軍服、カーテン、毛布など、収容所内のあらゆる物を使って、脱走の際に偽装するための普段着やコート、ドイツ軍の制服などを仕立てる。 
 
つまり、第56戦闘航空群から依頼を受けて、赤い裏地を施していたロンドンの縫製会社が「グリフィス」。その会社の主人か跡取り息子かが、英国空軍に出兵して撃墜され、ヒルツと同じ収容所に収監された。彼はそこで自分の縫製の技術を生かし、大脱走計画に参加した、という感じか。
岡本さんはこんなサイドストーリーを作ってしまった。

岡本さんの“みごと”な策略に、嵌った。どうしても “トイズマッコイ A-2 ウルフパック レッドシルク” を入手せねば。これを持たずして「大脱走」は語れない。「A-2好き」は名乗れない。と、どうしようもない単細胞は無我夢中になった。

冬夏関係なく、時々クローゼットから引っ張り出し、袖を通してにやにや。第56戦闘航空群指揮官 "ハブ" ゼムケになった気分。
となると、やっぱり趣味部屋の My Hanger には“愛機”が欲しい。その“愛機”の背景に“ゼムケA-2”を配して、宣伝ポスター風の写真が撮りたい。
実機のP47なら申し分ないが、無理に決まってる。適度な大きさの1/18が見つかって、「ゼムケのP47 1/18を作る」プロジェクトと相成った。