March 2012

ゼムケのP47 1/18を作る 2

ゼムケのP471/18を作るプロジェクト。現在、コックピットの改造で苦戦中。

キットのままの造型で我慢できればそれほど苦労はないのに、細かいところが気になりだして、いろいろ手を出し始めてしまった。
計器パネルはやっぱり針なんかがなくては“さま”にならないし、スイッチ類なんかも“それらしく”表現したい。
スロットルレバーの造型は省略されてしまっているから、やっぱり作らなくては。操縦桿の角度も少し気になるなぁ。
シートも修正してパイロットがちゃんと座れるようにしなきゃ。

先にとりあえず完成させたパイロット。それなりには出来たつもりだが、眺めているうちに欲が出始めた。
いやぁ、もうちょっとリアルに作れないかなぁ。

で、先のパイロットと同じシリーズの1/18フィギュアを見つけて再挑戦。
今回のフィギュアはヘルメットや顔、襟周りの造型が、先の物に比べて細かい。表情もなんとなくゼムケに似ている。
革のA-2を着せ、トラウザースも前回の轍を踏まえて丁寧に穿かせた。
救命胴衣やパラシュートも、細かい作業をいらいらしながら、指先で勝負。ま、とりあえず納得の出来。
酸素マスクはいい感じ。エポキシパテでマスク部をつくり、ホースは針金をコイル状に巻いて造形した。塗装はタミヤのアクリルカラーの「ラバー・ブラック」。
パラシュートは1/6のものを横において作業。ベルトは白い薄い革材を使い、縫い目は手書き。
納得するまでなんども作り直す。TVを見ながらの “ながら作業”。至福の時間。

P47pilotsecond1
左から バージョン2 バージョン1 ベース
P47pilotsecond2

P47pilotsecond3

作るためにいろいろ調べる。
資料画像を集め、ここはこうで、なるほどこれはこういう構造か。ふんふん。
背負ったパラシュートの傘収納部についている座布団みたいなのが、操縦席のシートに収まるときのクッションになる。
どう見てもすわり心地悪そう。シートなんて量販店で扱う座椅子とそう変わらない。いや、むしろ最近の座椅子の方が、リクライニングのものや、低反発クッションのものなんかあったりして、断然心地がいい。
その上、コックピット内は狭い。狭い上にいろんな計器類がいっぱい。そして何より高度の飛行は寒い。けどエアコンなんて無い。劣悪な居住性。
その中で巨体を操り、命を掛ける。想像を絶する世界だなぁ。
次々と出てくる当時の画像を見ながら、そんなことを考えた。

A-2の襟から覗く、ほんのわずかな赤い裏地が会心のこだわり部分。面相筆の筆先に全神経を集中した。あぁ、肩が凝った。
先のバージョン1に比べると、かなり “進歩した” と自己満足のバージョン2.
あぁ、はやく機体を完成させてコックピットに座らせたい。が、先は長い。

ドラえもんの「スモール・ライト」。どこかで商品化しないかなぁ。好みのサイズを指定できる模型製作用モデル。
1/6や1/24、1/32、1/200なんてメモリが着いていて、瞬時にそのスケールに変えられる。
そんなんがあったら、指先を震わせながら、極細のベルトに、爪楊枝の先につけたボンドを塗る、なんて作業は必要なくなる。
いやぁ、モデラー垂涎のアイテムだ。「どこでもドア」より欲しいかも。

でもさ、無心になれる細かい作業がなくなったら、模型作りの楽しさって何なの、なんて思わないか。
うん、確かにそうだな。

ゼムケのP47 1/18を作る 余話

ヒューバート・ゼムケを知ったのは確か3年半ほど前。きっかけはトイズ・マッコイ。

2007年だったと思うが、トイズ・マッコイが裏地が赤いシルクのA-2をリリースした。ベースとなったのは、ゼムケ(Hubert Zemke)大佐が着用していたA-2。
確か、商品名は“トイズマッコイ A-2 ウルフパック レッドシルク”。おおう、かっこいい。商品の解説には、“第8航空軍第56戦闘航空群”や“ゼムケ大佐”、“ゼムケズ・ウルフバック”なんて記述が並ぶ。“エースパイロット”なんて記述には胸が踊った。
なんで裏地が赤いかというと、エース・パイロットの証ということ。敵機を5機撃墜すると“撃墜王”、つまり“エース・パイロット”と認められる。第56戦闘航空群では、その証としてA-2の裏地を赤にすることに決めたんだとか。

裏地が真っ赤なんて、超かっこいい。それが “エース・パイロット” の証だというのだから、壷に嵌った。
もっとゼムケという人のことを知りたい。 “エース・パイロット” の証で裏地を赤にしたって後からの作り話じゃないの?
もう何年の前から、分らないときはWeb頼み。
愛用の「Google」に“ゼムケ”と入力して「検索」をクリック。結果、「P47サンダーボルト戦闘機隊—名戦闘機隊長ゼムケ大佐 語る」という項目が出た。
ビンゴって感じ。ほほう、本が出ているらしい。

ちなみに、今、同様に検索しても、検索結果の2、3項目目に「Amazon.co.jp: P47サンダーボルト戦闘機隊 ..」と出る。
.以下がその本の解説文。

〜 ゼムケ大佐率いるアメリカ第8航空軍第56戦闘航空群が英国に展開したとき、ドイツ空軍は依然として強力な敵だった。
実戦経験のない隊員たちはドイツの熟練パイロットに苦戦を強いられる。ゼムケはこの逆境を強力なリーダーシップで克服しようとした。
部下たちに規律を徹底させる一方で、部隊のためには将軍とも喧嘩する。
そんな彼の努力が実を結び、やがて第56は第8航空軍きっての精鋭戦闘機隊へと変貌を遂げる。
「ゼムケの狼群」の伝説的名指揮官ゼムケ大佐が、苦闘と栄光の日々を自らの言葉で語る本書は、逆境にあって屈せず、創意と努力でそれを克服した一人のリーダーの生きざまを垣間見せる好著である。〜

その時はこんな解説も読まず、その本を入手したのは後から。でも、読むまでもない。こんな本があるくらいだから。と、それだけで “ゼムケ大佐はかっこいい” と思い込んだ。
“トイズマッコイ A-2 ウルフパック レッドシルク” が欲しい。自分でも呆れる単細胞。
ちなみにこの単細胞は、どうも治す薬がない。自覚があるが、どうにも治療方法が見つからない。こんな重病患者を見捨てない奥さんに感謝。

このゼムケのA-2をリリース知ったのは、発売から1年半も経ってから。恵比寿の「トイズ・マッコイ」に電話したが、当然  “完売”  の回答。けど、諦めきれない。
「トイズ・マッコイ」の正規取扱店を調べ、南から順に根気よく電話で照会した。確か仙台のお店だったかしら、北から行けばよかったと思った。「在庫1着あり」でサイズもドンピシャ。夢見心地。

到着したA-2を見て、うっとり。赤がいい。裏地の肌触りがいい。革もいい感じで、着心地も大満足。エース・パイロットになった気がした。

A-2red 

「ゼムケ大佐 語る」の本。A-2の着心地に酔いしれて、やっぱり欲しくなった。 “エース・パイロット” の証で裏地を赤にしたって作り話じゃないの、という疑問が頭をよぎって確認したくなった。
通販で入手した。早川書房が1994年に発行したハード・カバーで、著者はロジャー・A・フリーマンという人。
187ページからに、ちゃんとその記述があった。

〜 ことにうれしかったのは、ジェリー。ジョンソンがMe109一機を撃墜して、これで彼の撃墜機数は5機となり、彼は“エース”つまり撃墜王となったという点だった。…中略
ジェリーの功績を表彰するため、われわれは彼を他の仲間からすぐに識別できるようにする方法が何かないか、捜し求めた。誰かが、カスター将軍麾下の精鋭騎兵隊が、レッド・インディアンの勇敢な戦士たちと戦闘を交える際に、明るい緋色のスカーフを巻いていたことを思い出した。われわれはわが航空群ではエースの目印をジャケットにつける赤い絹の裏地にすることに決めた。
こうしてジェリーは上着をはぎとられ、その上着はロンドンに送られて緋色の裏地をつけてもらうことになった。〜

アメリカのオハイオ州デイトンにある国立アメリカ空軍博物館: National Museum of the United States Air Forceに、実際にゼムケ大佐が着用したA-2が保存されていることも知った。
公式ホームページにはその写真が掲載されている。で、その解説文の一部は次のとおり。

The 56th had a tradition that when a pilot became an ace, he could have red lining sewn into his flight jacket; …
第56(戦闘航空)には、パイロットがエースになった時、フライトジャケットに赤い裏を縫い込むことができる、という伝統があって…てな意味か。

ちなみにこの博物館はライト・パターソン空軍基地内にあり、ライト兄弟が初飛行した場所はこの敷地内。名称のライトはライト兄弟のライト。

間違いない。赤い裏地はエース・パイロットの証。レプリカじゃんと言えば見も蓋もないが、“トイズマッコイ A2 ウルフパック レッドシルク” を持てたこと、結構自慢なのだ。

実は、このゼムケ・レプリカにはもう一つ、トイズ・マッコイらしい、プロデューサーの岡本博らしい、 “粋” な仕掛けがある。どうしても手に入れたくなったのは、この仕掛けが決定打。
裏地の左前部分にラベルが縫い付けられていて、そこにはロンドンの縫製会社名が表記されている。

A-2red2 

styled by GRIFFTH  LIMITED  MANUFACTURERS  LONDON
Expressly  for  The United States Forces   European Military Operation 

このA-2は、「グリフィス」という会社が、ヨーロッパに軍事展開するアメリカ軍のために仕立て直したという証明。

で、この「グリフィス」という名前。おおうっ、な、なんと。やられたっ。
さすがと言うか、呆れたというか、やっぱり岡本さんのこだわりの遊び心。

「グリフィス」とは、あの映画「大脱走」で、脱走計画の重要な役割を果たした捕虜の1人の名前。ロバート・デズモンドという人が演じている。
劇中、グリフィスの役割は仕立て屋。Tailorがニックネーム。軍服、カーテン、毛布など、収容所内のあらゆる物を使って、脱走の際に偽装するための普段着やコート、ドイツ軍の制服などを仕立てる。 
 
つまり、第56戦闘航空群から依頼を受けて、赤い裏地を施していたロンドンの縫製会社が「グリフィス」。その会社の主人か跡取り息子かが、英国空軍に出兵して撃墜され、ヒルツと同じ収容所に収監された。彼はそこで自分の縫製の技術を生かし、大脱走計画に参加した、という感じか。
岡本さんはこんなサイドストーリーを作ってしまった。

岡本さんの“みごと”な策略に、嵌った。どうしても “トイズマッコイ A-2 ウルフパック レッドシルク” を入手せねば。これを持たずして「大脱走」は語れない。「A-2好き」は名乗れない。と、どうしようもない単細胞は無我夢中になった。

冬夏関係なく、時々クローゼットから引っ張り出し、袖を通してにやにや。第56戦闘航空群指揮官 "ハブ" ゼムケになった気分。
となると、やっぱり趣味部屋の My Hanger には“愛機”が欲しい。その“愛機”の背景に“ゼムケA-2”を配して、宣伝ポスター風の写真が撮りたい。
実機のP47なら申し分ないが、無理に決まってる。適度な大きさの1/18が見つかって、「ゼムケのP47 1/18を作る」プロジェクトと相成った。

ゼムケのP47 1/18を作る1

わがちゃぶ台ファクトリー。「大脱走バイク」製作プロジェクトが終了して以降、稼動を休止していた。
新たなプロジェクトを求めて試行錯誤。

「インディ親子(ハリソン・フォードとショーン・コネリー)をドイツ軍のサイドカーに乗せよう」1/6プロジェクト
「ハズブロー製スピーダーバイクをリアルに改造しよう」1/6プロジェクト
「“ラットパトロール”のジープにトロイ軍曹を乗せよう」1/6プロジェクト
「“エンジェルウォーズ”に出てくるB-24リベレーターを作ろう」1/48プロジェクト
「B-17のプラモデルを“戦う翼”のThe-Body仕様にしよう」1/72プロジェクト
と、いろいろと思いつく。
「“The Mission”のB-17を再現しちゃおうか」1/72プロジェクト、なんてのも考えた。

けど、どのプロジェクトもそれなりの準備が必要だし、完成までを想像して、いろいろ困難が見えて躊躇してしまう。
それに、なかなかエンジンがかからない性格の上、飽き性がゆえに、少しずつ手をつけても他に気が移り、“よしっ、とりかかろ”とまで行かない。

ちなみに、
“ラットパトロール”は、アフリカ戦線を舞台にしたアメリカのTVドラマで、機関銃を装備した2台のジープがドイツ軍相手に活躍する。
“エンジェルウォーズ”は、空想アクション映画。主人公はセーラー服姿で、日本刀を背負い、拳銃を持つ。エミリー・ブラウニングという金髪の女優が演じる。モビルスーツや第2次大戦の爆撃機まで登場する。秋葉原系というかなんと言うか、かなり日本の“オタク”文化が発送の元になっているが、面白くてかっこいい。
“戦う翼”の原題は「The War Lover」。わがスティーブ・マックイーン主演のB-17爆撃隊をテーマにした白黒映画。劇中でマックイーンが操縦するB-17の愛称が“The Body”。
“The Mission”は邦題を「最後のミッション」。「世にも不思議なアメージング・ストーリー」(原題: Amazing Stories)というTVのオムニバス・ドラマの中の1話。このTVシリーズは1985年から1987年までアメリカで放映され、日本ではVHSとDVDがBOXで発売された。製作総指揮はスティーブン・スピルバーグ。シーズン1の第5話である「最後のミッション」は原案と監督もスピルバーグが手がけた。主演はケビン・コスナーとキーファー・サザーランド。B-17がある作戦に出かけ、帰還するまでを描く。想像を超えた奇想天外なラストは感動的。

どのプロジェクトも“実現するぞ”と心に秘めているが、掛かる時間は想像できない。

毎日、仕事を追えアパートに戻ると、風呂に入り、ちゃぶ台に腰を降ろし胡坐をかく。
冷凍食品中心の夕食を終えると、TVを見ながら、スピーダーバイクのパーツを紙やすりで擦ってみたり、B-24のパーツを組み合わせて形を眺めてみたり。
Mac Bookを開いて、ドイツ軍サイドカーの画像を集めて資料集を作成したり、DVDを再生し、“The Body”のノーズ・アートをキャプチャーしてPhotoshopで加工し、デカール製作用画像を作る、なんてことも進めている。
むかしから、TVをみながらプラモデルをつくる、なんていう “ながら作業” が好きで、たまらなく楽しい。至福の時間。
家族と離れての単身赴任生活は、時には寂しく、年甲斐もなく時々ホームシックになるが、この至福の時間が得られることは精神的メリットが大きい。

そんな “ながら作業” を楽しむ中で、ためしにやってみた作業が思いのほか上手くいき、“こいつは、このままいっちゃおうか” とエンジンがかかった。
「ハブ・ゼムケのP-47を My Hanger の主役にしたい」という1/18プロジェクト。

あるきっかけで、ヒューバート "ハブ" ゼムケという人を知り、彼の愛機P-47を、わが趣味部屋の “My Hanger(格納庫)”の主役にしようと思うようになった。

ヒューバート "ハブ" ゼムケは、第2次世界大戦時、アメリカの第8航空軍の大佐で、第56戦闘航空群を指揮した名将。
リパブリックP-47サンダーボルトを駆る彼の部隊からは数多くのエース・パイロットを輩出し、 "ゼムケの狼群:Zemke's Wolfpack" と名を馳せた。

エース・パイロットを何人も育てたなんてところがかっこよく、Zemke's Wolfpackという名前の響きに引かれた。
格納庫の主役はでかい方がいいなあ、なんて単純な理由で1/32あたりの模型がないかと探してみて、セカイモンで、なんと1/18というP-47を見つけた。
もちろんレーザーパック。ゼムケの愛機もレーザーパックがメイン。

P-47のキャノピーには「レイザーバック」と「バブル(水滴形)トップ」の2種類がある。レーザーパックはキャノピーの後の部分が胴体の後部に連なるタイプで、デメリットが後方視界の悪さ。
で、これを改良したのが、バブルトップという、キャノピーが胴体上部に水滴のように乗っかってるタイプ。前部も後部もガラスで覆われているから、視界は良好。
自分的には、P-47はレイザーパックが好き。どちらのタイプも決してスマートではなく、レーザーパックは輪をかけて不恰好。けど、その不恰好さがいい。
くらべて、P-51ムスタングはバブルトップが断然かっこいい。P-47同様の2種類のキャノピータイプがあるが、P-51は “スマート” がいい。

セカイモンで見つけた1/18のP-47レーザーパックは、21st Century Toysというメーカーの1/18のシリーズ。“でかっ”と思わずつぶやく大きさで、胴体の全長は61cm強。
実機の全長が11mだから、1100cm÷18=61.1cm。18分の1に間違いない。脚の折りたたみやキャノピーのスライド開放などギミックがある。
10cmのパイロットが1体附属していて、腕や脚が稼動する。10cm×18=180cm。身長180cmとは第2次大戦中のアメリカ人としてはちょっとでかい気もするが、まあ、いいか。

このパイロットはプラスチック製だから、フライトジャケットやパラシュートなどの装備もプラスチックのモールドで表現されている。
もうちょっとリアルにならないかなぁ、なんて思い、うまいぐあいに薄い合成革の端切れがあったから、これを貼って革ジャケットを表現してみることした。
TVを見ながら、しこしこ、のんびり焦らず、なんて感じで楽しんでいたら、これが思いのほか、自分なりに上手くいった。
よし、次はトラウザースも布で、と、これもいい感じ。ちょっと腕長体形のパイロットだが、なんとなくアニメチックで、これはこれで “あり”。
おお、いいじゃん、いいじゃん。楽しくなってきた。

P47pilot

P47pilot2

エンジンがかかって、“P-47 cockpit ”というキーワードでWebから資料画像も収集した。
計器パネルもくりぬいてメーター類を表現する。楽しい、楽しい。
ゼムケの愛機に書かれたマークや “UN-Z” というロゴの画像もほぼできた。このデータをアルプス電気製のマイクロドライプリンターを持っている友人に頼んで、デカールを作ってもらう。

ちゃぶ台ファクトリー再稼動。
しばらくの間、「ハブ・ゼムケのP-47を My Hanger の主役にしたい」1/18プロジェクトに嵌る。