兄のように慕う友人がいる。
時々、週末にどちらかの住まいのリビングで語り合う。最高に癒しの時間。時を忘れる。
彼は無類の車好き。好きだからいつも情報収集に気を配っている。その知識の深さにいつも感心する。
欧州車、特にMINIへの想いが強い。大好きという言葉がぴったり。
今はGOLFに乗っているけど、若い頃、MINIに乗っていた。
2台乗り継いだそうで、はじめのMINIが、オースチンローバーミニのメイファというやつ。1986年式で赤いボディに白いルーフ。
2台目が、1968年式のモーリスミニ・トラベラーMkⅡ。灰色(ガルグレー)で木枠がついている。ミニのステーションワゴン版といった感じのやつ。
見せてくれた写真は、愛車と並んで撮った記念写真。印画紙に焼かれた手札サイズ。今ならきっとデジカメのjpeg画像。時代を感じる。これを“ノスタルジー”と言う。

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Morris Mini Traveler  1/43  EBBRO製
グレイは製品化されていないようで、ホワイトをPhotoshopで加工してみた。

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モーリスとかオースチンとかローバーとか、ややっこしい。モーリスは自動車製造メーカーAustin Motorsで、オースチンはThe Austin Motor Company。これらの自動車会社いくつかが合併して1952年にBritish Motor Corporation (BMC)が出来た。そのあとJaguar Car LtdやDaimler Motor Companyを吸収して、1966年にBritish Motor Holdings(BMH)に。そしてLeyland MotorsとRover Companyと合併して、1968年にBritish Leyland Motor Corporation(BLMC)となった。
ま、乱暴な言い方をすれば、MINIはBMC時代の1952年に誕生して、その後、吸収、合併を経ながら、その時々の会社の傘下、いろいろなブランド名で発売された。と、そんな感じ。
その後、それぞれのブランドは変遷を経て、いまはバラバラ。

欧州車のメーカー吸収合併の盛んさにはびっくり。
2001年に発表された New MINI は、BMW製で100%新設計。
彼の1986年式メイファは社名がRover Group PLCとなった時のもので、1968年式トラベラーMkⅡはBLMC時代のもの。

先日も彼の家のリビングでMINIの話になった。彼のコレクションのミニカーを眺めながら、モンテカルロ・ラリーなんかの話になった。時を忘れた。

彼がMINIのカタログをくれた。ディーラーが配布しているもので、1991年版。ローバージャパン横浜支店というディーラー名が入っている。
歳のせいか、1991年なんて、ついこの間だと思ってしまうが、引き算したらもう20数年前のことじゃん。このカタログ、かなり貴重な資料。

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数年経って見るからか、現行の車のカタログを見るのとは違う魅力がある。MINIが現役だったころ、1991年に販売されていた時の、いろいろな姿やオプションパーツなどが見れるから、資料的に面白い。MINI辞典の一部を見ているみたいで、ついのめり込む。

で、もうひとつ面白いのが、カタログのデザイン。

普通、車のカタログというと、かっこいい風景の中に置かれた車の写真を使ってあることが多い。広大な風景の中を疾走する写真や、洒落た雰囲気の建物の前に停車している写真。「この車は上流階級志向のラグジュアリーカーです。」とか、「この車は週末を家族で楽しむファミリーカーです。」とか、「走ることを気軽に楽しむ新感覚のスポーツカーです。」とか、開発コンセプトを伝え、車のイメージを膨らませ易くするために、練りに練られたシチュエーションでの写真が使われる。
ところが、貰ったこのMINIのカタログには、そういうイメージ写真がほとんど使われていない。白地に車だけ抜いて配置されたレイアウト。背景はない。言い方を変えれば、必要最小限。
英国を代表する車のカタログ。さぞかっこいいイメージ写真がいっぱい、などと期待をしてページをめくると肩すかし。まさにカタログ。商品見本集。

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「何故に?」と考え、「なるほど!」と思った。

開発コンセプトは、世界中の人たちが知っている。いや、開発コンセプトなんてどうでもいい。それを超えた、多種多様の独自のイメージが、いろいろなところで出来上がっている。「車」と言って思い浮かべるのは、きっと「VWビートル」と「MINI」だといっても過言じゃない。今さらMINIに説明がいるか。
だから、カタログの写真は車の姿だけで充分。バリエーションが伝われば充分。
そう気づいてページをめくり直すと、このカタログの斬新さに気づく。白地に車が映える。お洒落でかっこいい。

でもやっぱり古さを感じるのは、使われている字体と文字のサイズ。微妙に大きく、今なら違う字体を使うはず。感性は時代とともに変化している。